2009年5月18日月曜日

Miho Museum

以前から名前は聞いていた、信楽にあるMiho Museumという美術館に高速1000円を利用して行ってみた。静かな山中に自然景観を配慮して地下に80%埋まった形で建てられている。経営母体は「神慈秀明会」という宗教団体とのことで、どこをとってもびしーっときれいで、スタッフはどなたも行儀がいい。高級ホテルを思わせる。考えてみれば高級ホテルというのも一種の宗教かもしれない。そういう世界に価値を見いだす人たちが集まって、お布施をはずんで、心地よい時間と空間を共有する。異分子は歓迎されない。美術館は、たいへん趣味の良いコレクションが世界中から集められている。大英博物館のエッセンス、という感じ。展示のライティングも良く工夫されている。Wikipediaで神慈秀明会について調べてみると、この美術館や、写真の遠景に写っている本部の建設のために猛烈な布教活動(と献金集め)をした時期もあったが、現在は沈静化して「浄霊」による布教もしていないとのこと。私の大学時代は、キャンパスでの「浄霊」がたいへん盛んで、同期の一人がそちらの方向に走ってしまった記憶もあるので、ちょっと複雑な気分だ。美術館としてはたいへん良いものであり、特別展示でも多くの美術館から貸し出しを受けていることから察して、美術界ではステイタスを築いているようだ。また、レストランやカフェがたいへんハイクオリティで、教義の一環でもある無農薬栽培したおいしい野菜がふんだんに使われている。どういうお金でできたのかを、少し忘れることができれば、楽しめる場所だ。

2009年5月14日木曜日

鈴鹿・鎌尾根・鎌ヶ岳

そろそろ雪以外の山も行ってみようかと、鈴鹿の鎌ヶ岳を歩いてみた。湯の山や武平峠からは何度も登ったことがあるが、鎌尾根は歩いたことがなかったので、スタンダードな宮妻峡からの周回コースを歩いてみた。宮妻峡への道は茶畑の中を通る。黒い紗で覆った「かぶせ茶」の畑も多く見られた。キャンプ場の駐車場にとめて歩き出す。水沢峠への道は先日の水害のせいか、谷筋は部分的に危なっかしいところもあった。宮越山を過ぎたあたりの稜線は、図のような「キノコ岩」がおもしろい。でもこのあたりはかなり滑りやすく要注意。
咲き始めのシャクナゲが美しい。ちょっと絵はがきっぽいが、遠景に鎌ヶ岳をとりこんだ構図にしてみる。白いゴヨウツツジも咲き始めており、下を向いた開きかけの花や、つぼみのカーブした形が面白いパターンを見せている。鎌尾根は、アップダウンも多く、鎖場などおおっと思うところもあちこちある。宮妻峡と鎌ヶ岳の標高差は800mぐらいだが、GPSの記録ではトータルの登った標高差は1000m以上になっていた。かなりハイグレードハイキングだ。
稜線のあちこちに咲き始めたリンドウやスミレを見ながら尾根を辿り、鎌ヶ岳直前の鞍部に着くが、ここから山頂まで最後の急登がある。登り着いた山頂から眺める御在所岳は、真っ平らな山頂部が面白い。双眼鏡で鈴鹿スカイラインを見ると、あちこち土砂がたまったままだ。昨秋の水害の被害がまだ復旧されないまま通行止めが続いている。地形図を見直すと、鎌ヶ岳山頂から北と南でずいぶん等高線の間隔が違う。やはり「鎌」らしいけわしさを味わうには南から、ということのようだ。谷筋をガンガン下って宮妻峡に戻る道は、かなり膝に来た。いつも思うが、やっぱりスキーツアーの方がずっと体にやさしい。

2009年5月11日月曜日

2009GWの立山・剱

長い休みの取れる良いGW。今回の目玉は、長いコースで知られる池ノ平山だ。初日はまず宿に不要の荷物を下ろして、さて、どこに行こうか。一日フライングしたので、どこも空いている。山はそこそこ白いが、稜線近くはハゲが目立つ。しかし、山崎カールはなんとか稜線まで雪がつながっているように見えるので、雷鳥沢から標高差700mを駆け上がって後立山連峰を眺めにいくことにする。山崎カールを直登する場合はローソク岩の真上にあがるのが普通だが、今回はその一つ左の少し途中が狭まっているルンゼを選んだ。カールの正面という感じが気に入ったのと、稜線まできっちり雪がついているようだったからだ。シール+途中からクトーで稜線まで登ることができた。反対側の御前谷上部に1,2本刻まれたシュプールが美しい。北の方にはこぢんまりしたカールが見える(後から調べて野口五郎岳のカールだと分かった)。途中やや足をとられる感もあったが、快適に滑り降りて雷鳥荘に投宿。
翌日は、前進基地の剣山荘に移動。剱御前岳のピークあたりからは、新しい剱沢小屋や剣山荘が真下に見える。剣山荘にチェックインして、午後は足慣らしに一服剣から武蔵谷を滑る。いつも、剱沢から見上げていると、狭くてろくに滑るところもなさそうだが、上部は結構広々としている。シュプールも2,3日前のかすりキズが少しあるだけでほとんど手つかず。一服剣山頂の北側がハゲているのは不思議だったが、風で雪がつかないのか、はたまた壁のようにそびえる前剱の反射で雪が溶けるのか?
6時の朝食前にあらかた準備をすませておいて、食後すぐにカリカリの剱沢の滑降で一日が始まる。ほぼ同時に出た同宿の5人パーティーは三の窓を目指すとか。平蔵谷、長次郎谷と少しずつ人数を減らしながら、ガリガリと滑っていく。真砂沢出合をすぎて少しすると、先行パーティーが左岸高巻きをしている。どうやら沢が割れているらしい。この季節にしては、ちょっと早い。ちょうど良い距離に先行者がいて助かった。この先行パーティーはテレマーカー8人(+山スキー1人)のグループで、真砂沢出合で幕営していたとか。今時ガイド山行でもないのに10人近いグループは珍しい。なかなか足前のそろったグループで結局池ノ平山頂まで前後して登った。写真は北股から見上げた池ノ平山。とにかく真っ白な山だ。近づくとどうにも絵にならないので、結局これ以後、山の全貌は撮影していないことに帰ってから気がついた。。
一応セオリー通りに池の平小屋の埋まっているコルから尾根上を登ったが、意外にやせた急斜面のところがあり、緊張させられた。9人組は一つ南の尾根を登っていたが、こっちの方が広そうに見えた。登っても登っても白い尾根が続くばかりでなかなか変化がない。高度計の数字をチラチラ見ながらジグザグを繰り返す。9人組もそうだったが、最近の人はどうもジグザグがきらいなようで、クライミングサポートを高くしてひたすらまっすぐ登る人がおおい。雪崩リスク低減とか、下りのために不要の踏み跡をつけないとか、いろいろ理屈もあるようだが、微妙な地形変化にあわせて、いちばん能率的なラインを探しながらジグザグを切っていくのは、結局楽だし、また滑降にまさるとも劣らない楽しさを味わわせてくれるので好きだ。登り着いたなだらかな尾根上の岩のところで登了とする。GPSによると地図の山頂の少し手前だった。膨大な斜面を惜しげもなくあっという間に下る。やっぱり木とか岩がある方が絵になるな、と贅沢な感想。相も変わらぬ長い長い登りを経て小屋に3時帰着。剱御前小屋よりはだいぶ楽に帰れた。剱沢小屋がまともに営業しなくなってから何年か剣御前小屋を愛用したが、剣山荘はそれに比べるとずいぶん空いている。ピークと思われるこの夜も畳み2畳に1人というぜいたくさだった。夜は食堂が談話室となるが、ここがちと寒いのが難点といえば難点。
翌日はやや曇りがちだったが、平蔵谷を目指して別山尾根を登る。板はかついでアイゼン+ピッケルで、しばしアルピニスト風。前剱の登りでは雷鳥夫婦を間近に見る。ほかのブログにも出てくるのでこの辺が縄張りのようだ。時間調節をしながらゆっくり登る。前剱から広がる山頂方面や平蔵谷の景観のダイナミックさに見とれる。平蔵谷出口の源治郎尾根末端の岩壁が黒々とでかい。見渡せば急斜面ばかりだ。中でも山頂の尾根から大脱走ルンゼを通るラインがNo.1だろう。この時期は山頂への登りも岩場を迂回できるそうなので出発点までは問題なく行けそうだが、いずれにせよ雪質しだいで難度やリスクが大きく変わるラインだろう。でも少し惹かれる。
平蔵のコルの少し手前から枝沢にすべり込んだがかなり急斜面だった。曇りがちで雪面が見えにくく、2,3ターンしては息を整えつつ、周りの起伏を見定める。本谷合流以降も結構な斜度がずっと続いた。平蔵谷はまっすぐなので出口の剱沢が上の方から広場のようによく見えている。クレバスにはまりかけたりしながらも無事出口に到着。剣山荘に12時ごろ戻っていろいろ考えたが、やはり風呂が恋しくなって室堂に戻ることにする。下り坂の天候に宿のキャンセルが出ていて、無事定宿に泊まることができた。翌日は奥大日方面に出かけたりしたが、あまりモチベーションがわかずあとはもっぱら湯治三昧だった。これだけ晴天が続くGWも珍しい。少雪が幸いして谷のデブリも少なく、良いコンディションの立山・剱だった。