2011年12月30日金曜日

栃木と宇都宮

 年末年始を過ごす裏磐梯へ向かう途中でどこかで観光をしようと、今まであまりなじみのない栃木県に途中下車してみた。県名と県庁所在都市名が違う県はちょくちょくあるが、県名と同じ名前の市が古くからあるのに、違う名前の市が県庁所在地になっているのはそう多くないのでは?栃木県と栃木市、宇都宮市はこの例だ。栃木市に県庁がない経緯はこの看板に(恨みたっぷりに)説明されている。ここで恨まれているように、二つの街の現状はかなり開きができているが、おかげで、栃木には巴波川(うずまがわ)の水運の集散地らしい運河と蔵の町並みが保存されている。この背景の建物は旧県庁(現在も栃木市役所別館として使われている)だが、緑色の木組みが美しい。



 市内中心街にも、蔵見世と呼ばれるしっかりした蔵造りの商店が軒を並べている。大きく重そうな屋根が目立つ。他に栃木高校の記念図書館や、栃木病院などを回って見たが、市役所別館と同様に木組みが美しい。また、いずれも現役で使われているところが面白い。
 老舗の和菓子屋「山本總本店」に飾られていたお正月らしい「めでたい箱」がきれいだ。道ばたで売っていたしめ縄にも鯛の飾りがあしらわれていた。鯛好きなお土地柄か。名物礦泉煎餅をお土産に購入。晴れているが寒いので早々に宇都宮に移動。
 栃木に比べると宇都宮は「ふつうの」都会っぽく見えるが、メインストリートに面してこのように立派な二荒山(ふたあらさん)神社があるのが目を引く。日光の入り口としての歴史を示している。ギョーザの街としても有名だが、岡崎と同じくジャズの街でもあるそうだ。(2012.2に後記)

2011年12月17日土曜日

ツァイス:レンズと本

 1994年発売のContaxG1というレンズ交換式AFカメラ用のレンズが、Carl Zeissの伝統的な構成を守りつつ、最新の技術でリファインされた高性能レンズとして評価が高かったのだが、残念なことに他のボディでは全く使えなかった。なにしろAF専用なのでピントリングすらないのだ。しかし、ミラーレス機のアダプターブームのおかげで工夫が重ねられ、最近非常に使い勝手のいいアダプターが発売されたので、とうとう我慢が出来なくなって、Metabones社のアダプターとPlanar 45mm F2およびBiogon 28mm F2.8を入手した(写真はPlanar)。
これらのレンズについては、上の写真でカメラの下敷きになっている本などでさんざん読んでいたが、聞きしに勝る高性能ぶりだ。ついでにこの本を読み返したところ、すぐ前に出版された「ツァイス 激動の100年」という本がその中で紹介されており、ついでにこっちも読んでみてツァイスという会社の面白さに感銘を受けた。顕微鏡製作では定評を得つつあったマイスター、カール・ツァイスと、20代の無給講師エルンスト・アッベの出会いのくだりや、後に経営の中心となったアッベ先生が自らの利益を求めず、どんどん莫大な額になっていく報酬を得ながらも、それを自分や家族のために使うのではなく、財団という形を作り上げて(その定款なども自分で工夫して、それを業績としてイエナ大学法学部から名誉博士号をもらったりも)、そこに寄付し、企業の発展や従業員の福祉、科学者の育成に使うようにしたというあたり、ちょっと感激した。ドイツの敗戦に伴う占領、分割などの大波乱をどのように乗り越えたのかも興味深い話が多く、後半はやや冗長ながら面白く読めた。読後には、レンズに刻まれた「Carl Zeiss」という文字が少し輝きを増したように感じられた。