2011年12月17日土曜日

ツァイス:レンズと本

 1994年発売のContaxG1というレンズ交換式AFカメラ用のレンズが、Carl Zeissの伝統的な構成を守りつつ、最新の技術でリファインされた高性能レンズとして評価が高かったのだが、残念なことに他のボディでは全く使えなかった。なにしろAF専用なのでピントリングすらないのだ。しかし、ミラーレス機のアダプターブームのおかげで工夫が重ねられ、最近非常に使い勝手のいいアダプターが発売されたので、とうとう我慢が出来なくなって、Metabones社のアダプターとPlanar 45mm F2およびBiogon 28mm F2.8を入手した(写真はPlanar)。
これらのレンズについては、上の写真でカメラの下敷きになっている本などでさんざん読んでいたが、聞きしに勝る高性能ぶりだ。ついでにこの本を読み返したところ、すぐ前に出版された「ツァイス 激動の100年」という本がその中で紹介されており、ついでにこっちも読んでみてツァイスという会社の面白さに感銘を受けた。顕微鏡製作では定評を得つつあったマイスター、カール・ツァイスと、20代の無給講師エルンスト・アッベの出会いのくだりや、後に経営の中心となったアッベ先生が自らの利益を求めず、どんどん莫大な額になっていく報酬を得ながらも、それを自分や家族のために使うのではなく、財団という形を作り上げて(その定款なども自分で工夫して、それを業績としてイエナ大学法学部から名誉博士号をもらったりも)、そこに寄付し、企業の発展や従業員の福祉、科学者の育成に使うようにしたというあたり、ちょっと感激した。ドイツの敗戦に伴う占領、分割などの大波乱をどのように乗り越えたのかも興味深い話が多く、後半はやや冗長ながら面白く読めた。読後には、レンズに刻まれた「Carl Zeiss」という文字が少し輝きを増したように感じられた。