木曽御嶽は私たちにはなじみ深い山だが、3000m級の独立峰だけに時期と天候次第で条件が大きく変わるので、いつ行くかの見定めが難しい山でもある。今回は、北西風の残る土曜日にまず東側の中ノ湯から稜線まで登り、風の弱まった日曜日にチャオスキー場から北端の継子岳に登った。狙いは当たって、二日とも天候、雪質ともに恵まれたスキーツアーができた。
来週末からは御岳ロープウェイが動くし、今週末から田の原までの道路が開通するので、中ノ湯(ロープウェイの丁度中間ぐらいの標高の登山口)から登る人は少ないだろう(よほどのヘソマガリ...)との予想通り、静かな山に自分たちだけのシュプールを刻むという贅沢ができた。写真は帰りがけに撮ったものだが、左端を拡大(写真をクリックして出る拡大写真を、もう一度右クリックして別のウインドウで表示させると、最大に出来ます)すると岩と岩の間を通るシュプールが見える。「カズヤシュート」と呼ばれるこのルンゼを滑った。(写真の右の方の、滑り台を横から見たような斜面が、開田高原からの登山道のあるところで、スキーには最高だそうなのでそのうち行ってみたいと、帰ってから記録を見て思った。)
稜線に上がると予想通り強烈な風に見舞われて早々に引き返したが、東斜面はほどよく暖められて絶好のザラメ雪。こういうときはまた、はっきりとシュプールの残るコンディションでもある。写真はカズヤシュートの下部(上天気寺本氏撮影)。軽く登り返しも交えて、滑りを堪能した。雲が激しく流れる様が美しかった。寺本氏の記録
日曜はチャオスキー場の営業最終日。主にボーダーで賑わうゲレンデを後に樹林に分け入る。営業終了の3時までに戻って下さいと言われたのが少々気ぜわしかった。そのせいか、最初に少々高度を稼ぎすぎてヤブコギもあったが、気持ちよくアイゼンの効く斜面を坦々と登り詰めて継子岳山頂に至る。今回楽しみだったのは、先日の北ノ俣岳から御嶽北端(継子岳)がよく見えたので、逆にこっちから見るとどんな風かなということだったが、写真の左の方に見られるように美しく裾野を引く北ノ俣岳の姿を見ることができた。その右の真っ白な三角は薬師岳と黒部五郎岳が重なった姿で、その右の雲のかかったあたりが笠岳。右端の大きいのはもちろん乗鞍岳だ。
滑りは「ぼくらのライン」と呼ばれる滑り台のようなルンゼを使った。ルンゼ内はやや緩みすぎぐらいで、ターンのたびにザッザッと湿った雪をはね飛ばしていく感じ。山頂直下の北東向き斜面を滑り出して、次第に左に寄っていったところが左の写真(上天気寺本氏撮影)。このあたりが堅すぎず柔らかすぎず一番快適な雪で、下に開田高原やマイアスキー場を見ながら、高度感あふれる滑りが楽しめた。左下のくぼみがルンゼの上端。寺本氏の記録
チャオの駐車場から継子岳を見上げた姿をカシミール3Dを使って今回のGPSトラックといっしょに合成し、更に実際の写真と重ね合わせたものが左図だ。赤が今回の登り、青が下り、緑は7年前に初めて登った時のGPSトラックで、このときは右のルンゼから登って、やはり「ぼくらのライン」を滑ったが、4月末だったので頂上直下は辛うじてエッジのかかるコンディションでかなり緊張した。継子岳は「日和田富士」とも呼ばれ、いくつも魅力的なルンゼを持っている(どれも急だが)。快適なスキーツアーには、風・雪のコンディションが緩み、チャオがまだ営業中という狭いタイムウインドウを狙う必要があるが、今回でだいぶ様子が分かったのでまた訪れたい。