2011年8月11日木曜日

三伏峠・塩見岳

 三伏峠小屋に2泊して塩見岳に登った。連日、早朝は良い天気だが8時頃には雲が多くなり、午後には雷や雨というパターンが続いたが、昼過ぎには小屋入りもしくは下山というスピード行動のおかげで快適な山歩きができた。
 鳥倉林道から三伏峠へは、南アルプスとしては良いアプローチ。夏は登山口まで一日2便のバスが走っており、自家用車ではゲートにはばまれて走れない最後の数キロも運んでくれるので、なかなか便利そう。林道はほとんどのところで普通車すれ違いができる程度の道幅があり路面もきれいだが、落石が多く注意を要する。三伏峠小屋は、ちょっとぶっきらぼうな第一印象だったが、だんだん味わいが出てきた。巧言令色の割に実がないという昨今のトレンドの逆。消灯は7時半で、厳密に運用されている。
 朝食は4時半から。前日は午後ずっと雨だったが、朝は雲も多いがまずまずの天候。富士山が見えて南アルプス気分が出る。本谷山からは北アルプス方面の展望が開ける(写真)。槍穂から白馬三山まで見えたのは予想外だった。中央アルプスもよく見える。本谷山からは湿った樹林の中のトラバースが続き、全然アルプスという感じはない。最後に急登を経て塩見小屋に出る。ここまでは辛うじて展望が効いていたが、わき出した雲につかまってしまう。

 塩見小屋は狭いので有名だが、若い小屋番さんが熱心に世話している印象。仮設の別棟もあった。地質的には、小屋の少し上から山頂にかけて緑色岩地帯だそうで、急にもりあがった塩見岳の形は、この硬い岩盤によっているのだなと納得。天狗岩をまきながらかなり傾斜のきつい岩の崖をよじのぼると、最後は高山植物の点在する土の斜面をへて西峰に登り着く。すぐその先が東峰(写真は東峰から振り返った西峰)。熊の平を経て間ノ岳に続く稜線や、蝙蝠岳方面は雲の晴れ間に望まれたが、富士山は見えず。塩見小屋で珈琲を飲んでから帰路につく。本谷山への道は遠かった。12時に小屋に帰りついてのんびりしていると、雷が鳴り出し近くにも落雷したようだった。夕方には驟雨。三伏峠小屋は結構広く別棟もあるので、土曜の夜だがゆったり寝られてありがたかった。北アルプスとはやはり人の数が違う。

 翌朝はまた展望の効く天気となり、朝焼け雲のかかる塩見岳を見ながら、小河内岳までの往復に出発。お花畑を抜けて稜線に出ると、伊那谷側の浸食の激しさに驚かされる。写真は烏帽子岳付近から振り返ったところだが、ガケの右の樹林の中に見えるのが三伏峠小屋。烏帽子岳から小河内岳に続く稜線は、昨日の樹林に沈潜するような道とガラッと変わってアルプスの雰囲気になる。塩見岳往復だけで帰ってしまうのはもったいない。

 近くに塩見岳、遠くに富士山を眺めながら稜線の道を辿り、小河内岳に着く。ここの避難小屋は素晴らしい場所にある。南に荒川岳、赤石岳を望み、正面は富士山。このあたりの稜線の避難小屋は、夏の間は管理人がいて、寝袋を貸してくれたり、簡単な食事も出るそうなので、軽い荷物での縦走もできそうだ。静岡側からは登山口まで時間がかかるし、標高差も2000m級なので、どうも縁遠い感じだったが、このあたりなら2,3泊でいろいろ工夫できそうだ。「南アルプスで一番人の少ない稜線」とのこと。
 三伏峠から往路を鳥倉に戻る。樹林の道はどこをとってもコケがきれいだった。アプローチが近いといっても標高差600mぐらいあるので、疲れた足には結構遠く感じた。登山口に地質の説明板がある。プレートの動きにともなう、「はぎ取り付加」という概念は知らなかったので面白かった。右下図では伊豆半島とその付け根の一帯が他より新しい付加体になっているが、この部分の自然放射線量の低さはこのあたりに関係があるのだろう。水場の位置が断層破砕帯というのもなるほど。先日行った山陰では「山陰海岸ジオパーク」と称してあちこちの博物館で地学的な説明が詳しくされていたが、地学も昔高校で習ったころと、概念が全く変わっているようなので、一度まとめて勉強すると面白そうだと思った。