2014年5月1日木曜日

薬師岳への長い道のり

 GW時期の中部山岳スキーツアー定番商品の一つに「飛越トンネルから入る太郎平小屋」というのがある。小屋がGW中食事付きで営業してくれるので、軽い荷物で深山(携帯も通じないような)に入ることができる。かつては双六小屋もGWに営業していたので、立山から槍ヶ岳に至る「日本のオートルート」もほとんど小屋泊まりで辿ることができ、太郎平小屋に泊まっていると夜遅くなってからでも、薬師岳を越えてきた人がゼイゼイとたどり着いたものだった。今回はまだ連休前のせいもあってか、そういう人もおらず、至って静かなヒュッテ暮らしを楽しめた。私たちとしてはこのところGWは立山・剱方面に凝っていたので、太郎平小屋は12年ぶり(3回目)となった。小屋泊まりの軽めの荷物ならまだそう苦労なく小屋に入れることが分かったが、以前の記録を見返すともっと速く歩いていたようで、ちょっとくやしかった。
寺地山から見た北ノ俣岳
小屋のHPで「トンネル入口から1.8kmのところに積雪」とあったので、だいぶ上まで車であがれると思っていたのに、ずっと手前で駐車車列を発見。(あとでHPを見直したら「部落から1.8kmに積雪」だった。)4.3km、1時間半以上も歩いて(半分ぐらいは乾燥路面)やっとトンネル入口に到着。ここから夏道沿いに上がったが、最近はトンネル向かって右の尾根を登る人も多いようだ。帰りはトレースに従ってここを滑ったが、こっちの方が傾斜が均一だ。あとはなじみのコースを坦坦と登る。前回は雪解けが早く、トンネルまで車で入れたけど、寺地山の稜線に近づくぐらいまで泥道を歩いた。苦労はするけど雪は多い方がやっぱり気分がいい。寺地山から北ノ俣岳の稜線を見上げると、北アルプスに来た実感がわく。最後に稜線に出るところはハイマツが出ているので、更に北に行くらしい先行者のトレースにつられて右手にトラバースしたが、すぐ下は北ノ俣川源頭の超急斜面なのでコワイ。ここは左に巻くべき。(懲りずに帰りにも同じ所を滑ってしまったが、朝なのでガリガリに凍っていて、更にコワかった。)稜線に出ると、一気に裏銀座方面の山々が見える。正面は大きな赤牛岳だが、これは未踏。それ以外の山々は12年の間にずいぶんおなじみになった。稜線の滑りはフィルムクラストで大変快適だった。YouTube
中央カールに滑り込む。背景は左が赤牛岳、右が水晶岳。
翌日は、黒部五郎方面を目指す人たちと別れて薬師岳に向かう。雪が多いのでほぼ直線状に登れる。薬師岳山荘は2010年リニューアルオープンとのことで真新しい建物になっている。避難小屋は、前回は三方の壁があって風よけになっていたが、今は奥の壁がなくなって氷の固まりになっている。「避難小屋の残骸」だ。山頂に至り、薬師如来にお礼をして、さてと見渡すと、すぐ北側の金作谷カールが急斜面だが良さそう。少し下から入った先行シュプールもあって、安定性も良さそう。お堂の裏から飛び込むと堅すぎず柔らかすぎず、絶妙のコンディションだった。大きな真っ白なカールの中では平衡感覚もスピード感もおかしくなる。前回も滑ったが大勢一緒だったので今回のような非日常感はなかった。南に登り返して、次は中央カールへ。更に大きなカールだ。底はクラスト状で鏡のようになっていて美しい。
中央カールとの境の尾根から見た東南稜カール
ここまで来たらと、さらに南へ登り返して、三つ目の東南稜カールへ。このカールは、上からでも底部の堆石(モレーン)が雪に埋もれきらずにはっきり見分けられる、カールらしいカールだった。中央部は雪庇が発達していて一部崩れているので、また南端のピークを目指して登り、東南稜に上がった。朝は晴れていたが、この辺りまで来ると雲行きがあやしくなったため、更に薬師沢源頭に滑り込む予定を端折って、東南稜をそのまま辿って主稜線に戻り、往路を帰った。
北ノ俣岳山頂から 左から笠岳、乗鞍岳、御嶽
3日目は高曇りながら遠望の効く天気となり、周囲の山々を改めて見直しながら北ノ俣岳に向かう。曇天のおかげで雷鳥たちも姿を見せ、縄張り宣言のグェーが良く聞こえる。山頂からは南方に笠岳、乗鞍岳、御嶽が並んで眺められ、ことに御嶽に陽が当たった姿が意外に近く美しかった。避難小屋までは朝の西向き斜面らしくバリバリに凍った雪面を、足を痺れさせながら下りる。どうもこの斜面は登りも下りも印象に残らない。ゲレンデのように、木もなく真っ平らなせいか。寺地山からの稜線は一部平坦なところやちょっとした登りもあるので、テレマークの、それもソフトな道具が適している。今季愛用靴のGarmont Excursionが快適だった。できればもう一泊して黒部源流も滑りたかったが、天気予報がわるいので1日端折った。それでも十分に充実した3日間を過ごすことができた。太郎平小屋の皆さんに大感謝!