2010年2月21日日曜日

海辺の生と死

 先日聞いた、しまおまほとジブリ鈴木敏夫との対談(PodCast「ジブリ汗まみれ」08/03/10)で、家族の書いた本は、あえて避けているのではないけれど、まだ読んだことがないというしまおさんに、鈴木さんは「お祖母さん(島尾ミホ)の書いた『海辺の生と死』を読んでから、お祖父さん(島尾敏雄)の『死の棘』を読むと、二人の恋愛がよくわかるんじゃないか」と言っていたので、後者は既に読んでしまったけど、前者を図書館で借りて読んだ。何かこの世のものならぬ世界を描いた本だと思った。奄美の小さな島に住むミホをとりまく童話のような世界と、その母が語るさらに童話度の高い世界。そこに、特攻隊長として赴任した島尾隊長。限りあるいのちと思えばこそ、理想の「隊長」として振る舞えた敏雄の姿。その後結婚してからの蹉跌は『死の棘』で語られるのだが、この本の中でも「そして私の夢の中にもしばしば島尾隊長が現れてきて、私の夫を悩ませているようです。」と控えめに不思議な表現で語られています。
 この本は、文庫にもなったのですが、現在絶版。今は電子書籍化の是非についていろいろ議論が分かれていますが、こういう読みたくてもなかなか読めない状態にある本を、電子化で救済するわけにはいかないものかと思います。そうそう、次の人が読めるように図書館に返しにいかないと。