2007年1月16日火曜日

「帝都東京・隠された地下網の秘密[1] [2]」


だいぶ前に単行本で出て話題になった本が、新潮文庫になっていたので買ってみた。11月に読んだ赤煉瓦駅の本が表の顔なら、これは東京の交通網の裏の顔をあつかった本だ。全体に記述があいまいで話も前後し、なかなか要領を得ない。これは、どうも、書きたいことをはっきり書けず、わざとぼかしているのかも知れないと思って、ともかく全体像をつかもうと、ざーっと斜め読みすると、ところどころにひっかかるところがあり、何となく全体像が浮かんでくる。しかし、後半になると、これはほとんど統合失調症の妄想の記録なのではないかという疑念がわいてくる。映画「陰謀のセオリー」や「ビューティフル・マインド」が思い出される。でも東京の地下なら何かあっても不思議はないような気もする。この本にもあったが、「営団」というもの自体、戦時下の挙国一致体制の一環として鉄道会社を糾合して作ったものなのに、戦後、他の営団が解体される中、なぜか帝都高速度交通営団だけが温存されているのも不思議だ。なにしろ今時「帝都」を名乗っているのも、初めて東京に行ったときに大変びっくりしたのを覚えている。何か綿々と伝わるものがありそうだ。冒頭で筆者がこだわっている国会議事堂前駅の地図表現だが、手元のMac版ProAtlasXの2.5万分の1図にも不思議な表現が見つかった。うーん、何かアヤシイ。
秋庭 俊 著 新潮文庫