立山へのアクセスはアルペンルートが一般的だが、歩いて往復するとそのスケールがもっとよくわかるのではないかと考えた。富山側の称名の滝から大日平に上がって、大日岳、奥大日岳を経由して室堂に入り、帰りは弥陀ヶ原をゆるゆると歩いて、八郎坂を駆け下りて称名滝に戻るという周回コースだ。先日、鍬崎山に登って、弥陀ヶ原やカルデラの様子を面白く眺めた。そのときに、大日平と弥陀ヶ原は、称名川の深い谷で切り分けられているけれど、本来ひとつながりの平面なのだなぁと思った。そんな様子が現地ではどのように見えるか、楽しみだった。
雨の予報の金曜日となったが、なんとか大日平山荘まで入れば、翌日からは天気も回復して縦走できるだろうという見通しだったが、立山ICを降りて走っていく途中に現れた表示盤には、「大雨のため称名道路通行止め」。雨の中を1時間余りも車道を歩いていく気にもならず、計画を変更してバスで室堂まで上がることにした。余った時間に、立山カルデラ砂防博物館で砂防事業のいろいろを勉強する。「鳶崩れ」など断片的には聞いていたが全体像がよくわかった。
予報天気図では、低気圧が通過した後、冬型っぽい気圧配置になりそうだったので、少しは雪がちらつくかなと思っていたが、翌朝は、あたり一面銀世界となっていて驚く。あまりしっかりした装備はないが、ともかく雷鳥坂を登って別山乗越へ。スキーでは何度も上り下りする斜面だが、考えてみると登山道を歩くのは初めてだった。こんなところに道がついていたのか、などと感心しながら歩く。途中は少し汗ばむぐらいだったが、稜線に近づくと冷たい風が吹き始め、剣御前小屋に飛び込んでホットコーヒーを注文する。あまりの寒さに立山縦走は却下して別山往復にとどめることにした。降りたての冷たい雪は乾いていて滑ることはなく、そういう不安はあまりないが、なにせMontrailの軽い靴なのでかなり場違いだった。雷鳥坂を下る頃には景色から白い色がずいぶん少なくなってしまった。ほんのひとときだったが、また雪の季節がくるなと、楽しい気分を味わわせてもらった。
最終日は大日の連山を眺めながら弥陀ヶ原まで歩く。予定では秋晴れの気持ちよい日になるはずだったが、どんよりとして寒い風が吹く日となった。弥陀ヶ原の広さや、一ノ谷のけわしさを楽しみながら、松尾峠の展望台でカルデラを眺めたらもう満足してしまって、あとはバスで下山した。大日平山荘がすぐそこに見えているのが面白かった。