2012年8月7日火曜日

41年ぶりの北八ツ

初めて長野県の山に登ったのは(生まれ育った大阪以外の山に初めて登ったのは)、高校1年の夏に社会科の鈴木嘉幸先生(キンギョ)が希望者を募って連れて行ってくれた山行ツアーだった。登った山は、戸隠山、飯縄山、そして北八ヶ岳縦走。最初は日帰りで軽い荷物で足慣らしをして、最後は重いザックをかついで景色の良い縦走という企画だったのだなと思う。今回は41年ぶりにその北八ツ縦走を再現してみた(飯縄山はこの春にスキーで再訪することができた)。鈴木先生(1982年に40代の若さで病没された)は、「宿には風呂がついてなければならない」というポリシーの持ち主だったので、渋御殿湯に泊まって、黒百合平に上がり、天狗岳、根石岳と縦走して夏沢峠で荷物を置いて硫黄岳を往復し、本沢温泉に降りて宿泊というプランだった。残念ながらそのときはずっと曇り・小雨で展望もほとんどなかったが、今回は晴天に恵まれて、先生はこの景色を見せたかったのかと、遅ればせながら堪能することができた。

渋ノ湯から黒百合平までの道はずっと樹林の中。黒百合ヒュッテで一休みして岩だらけの「天狗の奥庭」コースをたどるとだんだん景色が開けて来て、ついに西方面の大パノラマが広がる。写真の右は槍・穂高。真ん中が乗鞍、左の台形が御嶽だ。こんな景色を見ていたら次々といろんなところに行きたくなっただろうな(見なくても結局行きまくってるわけだが)。
天狗の奥庭から南の行く手を見れば、東天狗(左)、西天狗(右)がそびえている。あまり岩ゴロゴロを歩いた覚えもないし、天気が悪かったから前回は中山峠から縦走路を東天狗に向かったのだろう。あの時は稜線で雨風が強くなり十数名のパーティーがばらけてしまって、「東天狗で一旦集まって西天狗往復をしようと思ってたのに」と、2年生の先輩が叱られていたのを覚えている。今回は良い天気なので気持ちよく西天狗往復。
東天狗から南下すると根石岳(ちょっとした岩のでっぱり程度)。写真は根石岳の南の鞍部で、右に根石岳山荘がある。なぜかこの「白い平坦な場所の向こうが緑の樹林でちょっと登りになっている」光景が記憶に残っていたのだが、ここだったのかと納得した。あたりはコマクサの復元地になっていてたくさんのコマクサが咲いていた。
静かな樹林をしばらく下ると夏沢峠。まだ12時頃なので、ちょっと300mの登りはエライが、前回同様に硫黄岳往復をすることにする。硫黄岳は火山地形が面白い。写真は山頂付近にいる人たちを、少し東に離れたところから見たところ。溶岩に分厚く覆われた様子と、その上を楽しげに行き来する人たちのコントラストが面白い。地球の断面図イラストみたいだ。硫黄岳からは横岳、赤岳、阿弥陀岳など南八ツの眺めがすばらしい。ちょっと疲れて硫黄岳山荘あたりまで行かなかったのでコマクサの群落を見逃してしまった。前回は結構感動した覚えあり。
峠にもどって山びこ荘でコーヒーブレイク。窓辺の餌台に、のどのサーモンピンクが美しい「ウソ」がたくさん来ていた。近くで見ると背中のグレイとの取り合わせが大変きれいな鳥だ。本沢温泉のちょっと上から硫黄岳を見上げたのが左の写真。からまつが美しい。このあたりに野天風呂があるそうだが今回はパス。おかしいことに、前回は硫黄岳以降の記憶が全くない。よほど疲れて宿までたどり着いたのだろう。本沢温泉は山小屋っぽいけど旅館なので個室もたくさんあり、くつろぐことができた。白馬鑓温泉より高いところにあるというのはちょっと驚いた。
翌日は、主に東側を歩いて渋ノ湯に戻った。山を越えて温泉に泊まってまた山越えで帰ってくるあたり、一昨年のトランス御岳にちょっと似たコースプラン。まず樹林の中をみどり池に向かう。写真のように湖面に映る東天狗が美しい。湖畔のしらびそ小屋でモーニングコーヒーと思ったが、食事の準備中で断られて残念。中山峠へ上る道はだんだん急になり最後は結構息が切れた。また樹林の中の道をたどって小さな岩峰「ニュウ」へ。ここからは富士山が見えると聞いていたが、辛うじて雲の上にてっぺんだけが見えた。白駒池経由で高見石に登りあたりの景色に別れを告げる。
最終ピッチは高見石から谷沿いに渋ノ湯へ。出だしは苔むした樹林の中。雰囲気は良いのだが、通る人が少ないのか倒木が道をふさいだままになっていたり、やや荒れた印象だ。渋御殿湯が駐車場代一日千円取ったり何かと登山者に冷淡なのに対して、他に便利な登山口が増えたりして、ここを歩く人はかなり減っているようだ。「渋ノ湯」から上がって来たといってもそれがどこか知らない人も多くなった。このコースのハイライトは写真の「賽の河原」だ。延々と続く大岩を飛んで行く。日射しがないときでも、結構足にこたえるのに、この日は格別にきびしい日射しがふりそそいでいたのでかなり参った。ようやくたどり着いた渋御殿湯では、立ち寄り入浴は3時までと断られたので(つくづく愛想のない宿だ)、ちょっと下の辰野館で温泉三昧(ここは4時まで。ただし一人¥1,500ナリ)。18℃の源泉は最初震え上がったがだんだん快感になった。 41年前は、姉に借りたコンパクトカメラ(ミノルタHI-MATIC C)に20枚撮りのカラーネガを一本入れて行って、全部は撮りきらずに帰ってきた(つつましい)。この後ワンダーフォーゲル部に入ってからは、主に大阪周辺の日帰りだが色んな山に行くようになり、記録ノートも書くようになったが、この山行については何も書いていないので、このカビだらけのネガ一本だけが記録として残っている。
(後日、鈴木先生の手書きのチラシが見つかったので貼っておく。最後の宿は本沢温泉ではなくて稲子湯だったらしい。行ったら何か思い出すかな。pdf