何年か前に奈良に行ったとき、唐招提寺はちょうど金堂の大改修中で「おほてらのまろきはしらの」並ぶ様を見ることができなかった。昨秋だったか改修が終わったと聞いていたので、今回春の奈良を訪ねるに当たって、まず唐招提寺に行ってみた。この唐招提寺は、薬師寺と並んで西の京の二大観光スポットだが、薬師寺と比べるといつも地味というか学究的というか、対比が面白い。今回の改修も金堂の骨組みまで全部バラバラにした大規模なものだったが、結果は「どこを直したんですか?」と聞きたくなるぐらい元のとおり。この屋根瓦がびしーっと一直線に並んでいるあたりがポイント、なのかな?
境内を一回りしてみる。風は少し冷たいが、春の花がいろいろ咲いていて楽しい。ここは、鑑真和上の御影堂の入り口。年に一度、数日間だけ和上の像が公開される。高校生のときに見に来た覚えがあるが、和室の一角に思ったより小柄な像がまつってあったような。この建物は旧一条院門跡の遺構を移築した(パンフレット丸写し)とのことで、入り口から見ただけでも格調の高さがうかがえる。
あたりの風情が自転車向きのように思えたので、車に積んであったBD-1を取り出して、まずは薬師寺へ。あいかわらずにぎわっている。東塔の修理が10月から始まるので、10年間は東塔・西塔の並んだ姿は見られないとか。4−10月は東塔一階の内部も見せます、という人集めをするところがさすがに薬師寺的商売路線。こんな案内図を見たので西大寺まで走ってみることにする。垂仁天皇陵はお堀が大きく水鳥がたくさん集っている。新興住宅地を抜けてだんだんにぎやかなあたりに近づいて、ふと横を見ると西大寺の東門だった。
東大寺と並び称されるが、西大寺に来たのは初めて。近鉄の駅があるので名前には親しみがある。巨大な茶碗を使う茶会があるといううっすらとした記憶。写真は東塔の台座だが、西塔は跡形もない。元は薬師寺の様に東塔西塔に金堂を配したパターンだったようだが、その様子は全く失われている。東塔跡のすぐ脇に本堂があるが、これは江戸時代の建物。だいたい奈良の寺は中国式なのか土足で歩けるスタイルだが、ここは近世の建物なので板敷きになっている。現場では何か変だなと思っただけだったが、後で思うとそういう違いなのだった。次は、遷都1300年記念行事を一ヶ月後に控えて突貫工事が行われている平城京跡。だだっぴろいので、まさに自転車向き。このあたりで道路が渋滞気味なのを見て、いっそこのまま自転車で東大寺まで行ってみるかと思う。
行き当たりばったりで東に走り、猿沢の池に到着。ここまで来ると奈良に来た気がする。新しくなった興福寺の宝物殿で久々に阿修羅像を見る。鹿せんべい(150円)を買って、手を鹿のよだれでべとべとにしながら、東大寺に至り、大仏殿に参拝。ここはさすがに人が多い。おつりが少ないように大人一人500円と切りのいい数字になっているのがおかしい。「大仏は見るものにして尊ばず」(米朝さんの落語「鹿の政談」)というそうだが、老若男女世界中の人が見物に集まっている感じ。柱の穴の通り抜けも長い行列ができていた。帰りは奈良町からJR奈良駅(高架工事中)、三条通(ところどころ工事中)を突っ走って(自転車向き)、秋篠川沿いの自転車道を走って唐招提寺に帰着。サイクリングとポタリングの中間ぐらいのバイクライドであった。(ちなみにここの自転車道では、車道との交差点で一旦停止とも降りて歩けとも書いてありませんでした。正しい。)