2010年8月10日火曜日

船窪小屋から烏帽子小屋

 昨年秋にブナ立尾根経由で烏帽子岳に登り裏銀座縦走をして、高瀬川流域の山々になじみができた。少し北に稜線をたどったところにある船窪小屋が、ランプの山小屋、食事のおいしい小屋、良い雰囲気の小屋等々として有名らしいので、昨年泊まった烏帽子小屋と2泊3日で縦走してみた。この辺りは、麓と稜線との間は1400mほどの標高差があるので、行きも帰りもそれぞれハードなだけでなく、稜線の縦走も結構なアップダウンがあってかなり体力が必要とされる。今年は富士山スキーの後、海に行くようになって山歩きを全然していなかったのを、途中で思い知らされることになった。七倉から船窪小屋に登る七倉尾根は、おとなりのブナ立尾根よりハードな印象。ブナ立尾根がハシゴ、桟道などできれいに整備されており、均一な傾斜で登っていけるのに対して、七倉尾根は胸突八丁ならぬ鼻突八丁と言われるぐらい超急斜面がときどき出てきて、息があがる。写真のようにかなりの部分がシャクナゲに覆われていて、花の季節はさぞ美しいのだろう。
 ずーっと花の無い登山道だったが、小屋近くになってお花畑が現れる。雪田の雪の残り方に差があるためか、場所によって季節の進み方にずいぶん差があるのが面白い。チングルマは、白い花が咲いているか、ぼうぼうと種子の毛が伸びた状態か、どちらかを見ることが多いが、写真のように、そのちょうど間の状態が見られるお花畑があった。おしべの付け根辺りから毛が伸び出している。今まであまり見たことがないような気がする。
 たどり着いた船窪小屋は、稜線の真上にがっちりと建てられている。稜線はほぼ南北で、東には大町が見え、西には明日通過する船窪岳から不動岳への稜線、その向こうに立山から五色平を経て薬師に向かう稜線が眺められる。眺めの良い小屋だ。まずお茶を一杯頂いてから寝床を確保。お盆休み前の週末だが、金曜なのでまだゆったりしているようだ。野菜炒めと目玉焼きが入ったインスタントラーメンを作ってもらい、ビールで乾杯。やや天気が不安定なのでまずは小屋で休憩。ときおりザーッと降る雨音を聞きながらの昼寝が終わると、辺りの眺めも回復したようす。
 今日は、週末に備えてヘリの荷揚げがあるそうで、おいしいものが上がってくるぞという期待を込めて、泊まり客総出でヘリを出迎える。下界は晴れているが稜線には雲が去来して視界はやや不安定。ヘリは何度か行き来していたが、最後に七倉尾根沿いに上がってきてヘリポートに荷物を置いてさーっと引き上げていった(動画)。その後、もう一回荷揚げのために近くまでヘリが上がってきたのだが、稜線がガスに覆われてやむなく中断。野菜やらビールやらの荷揚げ品を皆で運んで倉庫に収めた。夕食は期待通りていねいに作られたもので、昨今の山小屋はどこもなかなか健闘しているが、さらにその上を行く素材も調理法も吟味された食事だった。今年から入った(とは思えないほどてきぱきと仕事をされている)小屋番のhikaruさんがメニューの説明をしてくれる。食後も、滞在中のネパールの方が入れてくれたネパール茶+上がってきたばかりのトウモロコシを頂きながら、DVDで小屋のあれこれや針ノ木古道(サラサラ越え)の歴史を勉強。
 翌朝、出がけに水を頒けてもらうが、ここの水は30分ほどおりたところの水場からボランティアの人力で汲んでくるとのこと。それなら、昨日は早く着いたので一度ぐらい汲んでくれば良かったな。多くの同好の人たちの働きで支えられている小屋のようだ。不動岳までの稜線は、左手にずっと荒れた不動沢源頭を眺めながら行く。ここは遠くからでも白いガケとして目立つ稜線だ。またここから流れ出す膨大な量の土砂が高瀬ダムのダム湖に流れ込み、ダムの寿命を縮めている。前回来たときは大型トラックのコンボイがそれを運び出す様子を見たが、何ともむなしい努力に思われた。写真は船窪岳直後の稜線。こんなところが何度も出てきて、道を維持する大変さを思う。
 道は大変だが、花々はきれいだった。写真はイブキジャコウソウ。ずっと曇りがちで眺望はぱっとしないが、ガスで細かな水滴が花について美しさをましている。不動岳まで上がると樹林を抜けて岩稜歩きとなる。ここで10時ちょっと前。ちょっとハイペースで歩きすぎたか、膝が痛くなってくる。南沢岳への稜線は、あまり切れ落ちた箇所はないが、くずれやすい土の斜面が多く、また一苦労させられた。やっと頂上かと思ったら、まだ上がある。秘蔵のジェルを飲んでようやく南沢岳に到着。ここは昨年烏帽子小屋から往復したので見覚えがある。ここまでの行程は、小屋から300m下って船窪乗越、100m登って船窪岳、100m下って250m登って船窪第2ピーク、250m下って400m登って不動岳、200m下って200m登って南沢岳、という感じ。疲れるはずだ。
 よれよれになった足をなんとか運んで烏帽子に向かう。南沢岳から烏帽子岳にかけて、白い砂地のところには薄緑の斑点状にコマクサが沢山生えていて、ちょうど今盛りの様子。こんなにコマクサが群生しているのは他にはなかなかないように思う。ガスが去来する四十八池を過ぎて、烏帽子岳はパスして、前烏帽子の思ったより長い登りを過ぎて、やっと烏帽子小屋到着。カップラーメン+ビールで昼寝は昨日と同じ。この日も夕方になると晴れたので、ヘリポートで三ツ岳や、高瀬川の向こうの燕岳、餓鬼岳を眺めながら同宿の人たちと山談義。野口五郎のテント場が無くなったので、テントの人は三俣蓮華まで行かないとテント場がない、行けるかなと聞く人があり、軽い軽いという声もあり、結構キツイでしょうという意見もあり。明日の水晶小屋は定員の倍の予約が入っているとか。
 翌朝、烏帽子岳に登るが、あと少しのところでガスに囲まれあまり眺め無し。前烏帽子のあたりから昨日の稜線や船窪小屋が眺められたのは良かった。烏帽子小屋に戻りホットミルクで一休み。靴を脱ぐのが面倒だったので小屋の前のトイレに入ったが掃除が行き届いていて快適だった。小屋の前の掃除、箒目まで付けてマニアック。昨日の今日でブナ立尾根の下りが思いやられたが、整備された道のありがたさで、一歩ずつの高低差を減らしてゆっくり降りて何とかこなすことができた。下の方ではアサギマダラが優雅に飛んでいる。高瀬ダムの上で、待ち構えていたタクシーに乗って七倉に戻り、七倉山荘の地味な温泉でたまった汗をながした。